3. 羽島、海岸の古びた祠
島に着いた日は、佳那には撮影の仕事があった。
榮と巽は、それを見学した。
どうやら、男女兼用モデルらしく、男の子の服も佳那は着ていた。
「そういう服も似合うね!」
榮が言うと、
「そりゃ、そうダヨ☆」
と、佳那は笑って答えた。
「私、この方が良いと思うわ」
巽がそう言うと、佳那は真っ赤になった。
「ありがと…」
「?」
撮影は順調に進んだ。明日も撮影があり、明後日にスタッフは帰る予定らしい。
今日は、せっかくだから、と花火をすることになった。
夕食が終わると、スタッフの人も含めて全員で海岸に向かった。
「これ、打ち上げ花火?」
「そうよ。小さいのだけど、結構、綺麗だと思うわ」
メイクのお姉さんが花火を仕分けしてくれた。
「これは貴方達の分ね。いっぺんに火をつけるのはダメよ?一つずつにね?」
「はぁ〜い」
返事をして受け取る。暫くすると、男性スタッフ達が木を組み上げて
キャンプファイヤーのような事をし始めたので、海岸も少し明るくなって、
手持ち花火は目立たなくなってしまった。
「もっと暗い所に行こうか?それなら花火、綺麗に見えるよ」
「YES!」
「そうね」
子供達はキャンプファイヤー(?)の明かりを避けて、林の方に行った。
林に入ると、さすがに離れ過ぎなので、
数メートル手前の崩れた石垣の所で花火をした。
「綺麗だね」
「うん」
花火に熱中する榮と佳那を放って、巽が何かをし始めた。
砂を払ったり、石を退かしたり…。
「何してるの、巽ちゃん?」
さすがに気がついて、巽の方を見た。
「これ、神様でしょ?」
崩れた石垣、そこには、古ぼけた小さな祠が建っていたのだった。
石垣が崩れて、その石で塞がれた上に砂をかぶって、
見えなくなってしまっていたようだ。
「本当だ!」
榮も驚きだった。こんなに酷い状態では可哀想である。
三人は砂を懸命に払い退け、なんとかその形を取り戻す事に成功した。
「これでよし。神様もきっと喜んでるよね?」
「うん…」
巽が嬉しそうに微笑んだ。
いつも表情が硬く、滅多に笑わない巽が笑った。
しかも、それがとても可愛らしいことは言うまでも無く…。
(可愛い〜)
と、榮が思ったのは当然の事ながら、佳那もその笑顔に見とれていた。
「巽のスマイル、とってもキュートね。僕、思わず見とれちゃいまシタ☆」
と佳那も笑う。
これがまた、整った綺麗な顔立ちをしているから、榮は赤面しっぱなしである。
「お〜い!佳那さん、榮くん、巽ちゃん!そろそろ帰るよ〜!」
瑞葵くんが呼んでいる。
「はぁ〜い」
こうして、一日目は過ぎたのである。